「理想の食事法」を脱して自分に合う食べ方を見つけた話

妊娠糖尿病になった私は、産後、どんな食事をすれば糖尿病にならないか暇さえあればずっと調べていました。なぜなら妊娠糖尿病になった人はそうでなかった人の約7倍将来糖尿病になりやすいという統計データがあるため、普通の食事では糖尿病になってしまうのでは?と考えたからです。

そんなある日、「動物性食品を排除し、植物性であっても加工食品や脂質(植物油など)はできるだけ避け、未加工・未精製のものを食べる」という海外の食事法を知ります。簡単に言えばできるだけ脂質を摂らず加工度を最小限にした菜食で、これに当てはまる食材(野菜・果物・豆類・オートミールや玄米など)であれば、糖質を気にせず食べても糖尿病が悪化することなく、むしろ寛解する方がたくさんいる食事法でした。

妊娠中糖質制限で辛い思いを経験した私は、糖尿病を恐れることなく糖質を思いっきり食べられる、というこの食事法に驚きつつも非常に惹かれました。さらに詳しく調べると、生活習慣病自体や他の病気にかかるリスクを減らせたり、環境にもやさしく、経済的であるという利点まであり、私にとっては理想の食事法でした。

しかし、以下の理由から、私はこの食事法を続けることができなくなってしまいました。

理想と現実のギャップ

体の不調

当時私はBMI16 あるかないかという超低体重だったのですが、いくら食べても食べても太れず、常にお腹が空いていて、授乳期間もとっくに終わったのに不眠が続いていました。こちらも糖質制限のときよりはまだマシでしたが、同じようにいくら食べても満腹感を感じることができなかったんです。お腹いっぱいなのにお腹いっぱいじゃない、というような変な感覚でした。

このときはこれが当たり前だと思っていたのですが、あるときたまにはお肉を食べてみよう、食べてみたらどうなるかな、と思い食べたら身体の奥底からパワーがみなぎり、すごく元気になったのを実感しました。頭もクリアになった感じがしました。満腹感が持続し、その夜は驚くほどぐっすりと眠ることができました。それがきっかけで、徐々に動物性の食品を摂るようになりました。

ただし、このとき、私は極力動物性食品を排除していましたが、完全に排除していたわけではありませんでした。なので不足しやすいといわれるビタミンB12といった栄養素も食事中から必要量は摂れているだろうと考え、サプリメントは摂っていませんでした。もしかしたら食事中からは十分摂れておらず、サプリメントを摂っていれば問題なかったかもしれません。また、もし私の体重が標準体重で、それなりに脂質も摂っていればまた違ったかもしれません。

しかし、調べると、それでも(サプリを摂ったり、栄養バランス等に気を付けたりしていても)身体の不調によりこの食事法をやめた人をYouTubeやSNSで見ました。そこでの話の内容が自分とよく似ていました。「頭にもやがかかっていたのが、サーモンの缶を食べたらパーッと消えてすごく鮮明になった」という内容に、私だけじゃなかったのか、と安心感を覚えました。合う人が一定数いる一方で、合わない人も一定数いて、私もその一人ではないかと思うようになりました。

ちなみに、この間、生理はずっときませんでした。

こどもが食べてくれない

これは主にお菓子の話なのですが、私はしばらくの間植物性食材のみで油を使わないお菓子作りにハマっていました。が、こどもの舌って繊細なんですよね。私が美味しいと思い、夫も美味しいと言ってくれるお菓子を作っても、こどもは一口食べていらない、ということが多々。市販のお菓子や他の方のレシピを参考にした結果、動物性植物性にこだわらず、こどもが喜ぶお菓子を作ろうと思うようになりました。

ちなみにそんな中我が家のこどもが食べる手作りお菓子は

  • ココナッツオイルのチョコ(ココナッツオイルを溶かしてココアパウダーと甘味料を混ぜて固める)
  • 白玉団子(白玉粉と水または豆腐を混ぜて丸めてゆでる)
  • バナナアイス(凍らせたバナナをフードプロセッサーで攪拌して作る)

という感じで、いろいろなレシピを試しましたが焼き菓子は作ってもあまり食べないことが判明。なので焼き菓子は純粋にお菓子用ではなく、私と夫用に砂糖や油を控えめにした朝食用のマフィン等を作ることがほとんどになりました。以前は一切使わなかった油も少量ですが使うようになり、卵もそのときの体調によって使うようになりました。

環境の変化

私は10代の頃から消化器系に問題を抱えていました。それであまり積極的に外に出ることが好きではなくなってしまったのですが、今やりたいことがあり、外に出る生活へと生活が変化しました。

植物性食材からたんぱく質を摂取するには豆が欠かせませんが、豆は高FODMAPに属するものがほとんどで、消化器系に悩みのある私は外に出る生活と消化に負担がかかる食生活を両立することができなくなりました。少量なら大丈夫でも、動物性食品を摂らない分豆の量を増やさざるを得ません。実際にFODMAP食では少量ならOKだけどたくさんはNGという食品がいくつもあり、その分症状が重くなることも考えられます。これは他の高FODMAPの植物性食品にも当てはまります。

消化の問題だけではなく、忙しくなると調理方法も時短や手軽さが大切になってきます。上記の食生活を送っていた頃は家にいる時間が多く、時間に余裕があったため通販でレンズ豆やひよこ豆など様々な豆を取り寄せては調理していましたが、忙しいと料理を考え、豆を戻して煮ることも難しいんですよね。それよりも、手間なく思い立ったらすぐできて、家族みんなが満足できる料理を作るようになりました。

お豆自体は好きなので、今も調子をみながら食べるようにしています。

食べ物が偏ることへの恐怖

植物性食材のみで油を使わないお菓子を作っていたとき、胸やけがして苦しくなることが多々ありました。植物性のお菓子を作るときは、豆腐や豆乳を必ずといっていいほど使うので、状況からしておそらく大豆製品の摂りすぎだろうなと思いました。このまま食べ物が偏って、アレルギーが出てしまったらどうしようと怖くなりました。実際にSNSで、病気を克服するために頑張っていたけれど、症状が改善しなかっただけでなく、アレルギー症状がひどくなり、食べられないものが増えてしまったのでやめる、という投稿をした方がいました。

少量で満足できたり、植物性の中でも幅広く食材を使える方なら問題ないかもしれません。しかし私はそうではありません。それよりも、動物性食品を含め色々な食材を適量ずつ摂る方が不安やストレスがなく、私にとっては合っていると考えるようになりました。

自分に合った食事法

そういうわけで、私はこの食事法を断念し、できるだけ続けられて血糖値対策もできる自分に合う食事スタイルを探し求めました。その結果、今では

  • ひとつの食品を食べすぎない
  • 食べてはいけないものを作らない
  • 油・砂糖控えめにする
  • できるだけゆでたり蒸したりの湿熱料理にする
  • ご飯の前には野菜やたんぱく質、それが難しい場合は酢入りドリンクを飲む
  • ご飯も食べるけれど、糖質は意識する
  • 食後に運動をする

といったことをベースにして、その都度日々の身体の声を聴く、というゆるやかなスタイルに落ち着きました。日々の身体の声を聴くってどういうことかといえば、難しいことでもなんでもなくて、たとえば私は平日の朝は卵かけご飯にしているので休日は卵を控えよう、とか、昨日の晩御飯は食べすぎたから今朝は軽めにしよう、とかそういうことです。肉や魚など動物性食品も食べますが、摂りすぎると身体に負担がかかるのを感じるため、あまり食べすぎないように気を付けています。ちなみに妊娠糖尿病から5年が経ちましたが、今のところHbA1cは基準値におさまっています。

アレルギーやその他の病気、またはそれ以外の理由がある場合は別ですが、私は画一的に食べてはいけないものを決めてそれに自分を当てはめるのではなくて、自分の気分や体調に合わせて食べるものや食材の量を決めていく、という方が心地よく心と身体に合っています。そしてこれもまたひとつの「丁寧な暮らし」の形だと思っています。

SNSや各種媒体で私の理想だった食事法で毎日をキラキラと快適に過ごしている方を見ると、どうして私にはできなかったんだろう……とちょっと切なくなることも正直あります。でも、私自身を振り返ると、どう考えても当時よりも今の私の方がはるかに生き生きとした毎日を送ることができていて、これには今の食事が大きく貢献していると実感しています。

余談ですが、以前は動物性食品と油を使わないレシピをレシピ投稿サイトやSNS等にたくさん出していました。しかし、以前ほどの魅力や健康効果を信じることができなくなっていき、辛くなっていきました。個々のレシピそれ単体はいいとしても、そういうレシピばかり紹介することによって私もその食事スタイルで生活していると誤解されたり、その食事スタイルを勧めていると捉えられたくはないため、レシピ作りに関してもあえて動物性食品を使ったものも出すようになりました。

本当はもっとこうしたらいいだろうな、こうしたら人気になるんじゃないかな、というのは頭にうっすらありました。でも今となってはあのとき思い切れなくてまぁよかったんじゃないかなと思います。まとまってきた自分のスタイルを今後も歩んでいけたらなと思います。

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